
怒りは大きなエネルギーです。戦う原動力にもなりますが、悪い方向に出てしまうと、周りの人も自分も傷つけてしまいます。怒りっぽいという自覚がある方は、トラブルの予防のためにもアンガー・マネージメントを学びましょう。
アンガー・マネージメントとは?
アンガー・マネージメントは、英語でAnger Management、つまり怒りを管理する、コントロールするという意味です。
そもそも「怒り」自体は、誰でも感じる健康的な感情です。しかし怒りがネガティブな方向に向かってしまうと、仕事でもプライベートでも人間関係に支障をきたすことがあります。
あなたは怒りっぽい方でしょうか?実は遺伝的/生物学的な原因で怒りっぽい人がいることがわかっています(もちろんそれだけではなく、環境との相互関係も影響を及ぼします。
怒りっぽい人は些細なことで怒りを感じやすいのは変わらないかもしれませんが、”怒りへの反応をコントロールすること”=アンガー・マネージメントを学べば、トラブルを減らすことができるでしょう。
アンガー・マネージメントで目指すのは①怒りの感情を軽減すること、そして②怒りを引き起こす身体の反応を減らす、ことです。

怒りを研究しているCharles Spielberger博士は、人が怒ると、心臓の鼓動が早くなり、血圧が上がり、アドレナリンやノルアドレナリンといったホルモンレベルが高まることを指摘しています。こういった身体と怒りの関係に着目して、怒りを抑えるために“身体を使う“と効率がいいです。
怒りに対する3つの対応方法

怒りの対応方法は大きく分けて3つあります。
①怒りを表現する、②怒りを抑圧する、③怒りを鎮める、の3つです。
①怒りを表現する
怒りのエネルギーを使って、上手に自己主張すれば、ものごとを良い方に変えていくことができます。これはとても健康的な怒りの対応方法です。
しかし、怒りのあまり他者を攻撃してしまうなど、自己主張が上手にできない場合は、トラブルのもとになってしまいます。ですので、怒りっぽい人は、特に自己主張のコツをしっかりおさえて、冷静に自己主張することが大事です。
怒りを表現するときのコツ
上手に自己表現できるかどうかがキーポイント
上手な自己表現とは・・・
・自分が何を求めているのか、何を主張したいのか明確にしておく
・相手を攻撃しない(攻撃的な態度をとったり傷つけるようなことを言わない)
・状況を整理して話す(根拠や理由を明確にする)

怒りっぽい人は、自己主張の練習をする”アサーション・トレーニング”も重ねて学ぶことをおススメします。

②怒りを抑圧する
怒りの原因になったことを考えないようにするなど、怒りを抑えるという対応方法があります。
しかし、これもコツがあって、怒りを無理に抑え込むと状況が悪化する可能性が高いので注意してください。
例えば、あなたが夫に怒っているけど、それを抑圧したとしましょう。怒りを表現しないにしても、心の奥では怒っているので、なぜか夫と口をききたくなくなったり、夫に冷たくなったり、皮肉を言ったりしてしまいます。無意識に意地悪してしまうのですね。そのうち、夫との関係が悪くなっていくのは目に見えています。
また怒りが自分の内側にたまっていって、自分の方が高血圧になったり、抑うつといった症状が現れることがあるので注意してください。
③怒りを鎮める
怒りを上手に使って効果的な自己主張するのもいいですが、怒りを鎮める方法も自己コントロールに役立つので身につけておきましょう。

それでは、ここから怒りを鎮め、気持ちを落ち着かせる方法をご紹介します。
怒りの対処法:まず気づくこと
怒りをコントロールするには、まずは怒ったことに気づいて、観察することから始めましょう。
というのも、よく「感情に巻き込まれる」、「怒りに巻き込まれる」という言い方をしますが、感情/怒りに巻き込まれると、どうしても冷静さを欠いてしまうからです。しかし怒りがわいたときに、「あ、私/僕、怒っているな」と気づけると、“怒り”と“それを見つめる自分”に距離ができ、「じゃあどうしたらいいだろう?」と対応方法を考える余裕が出てきます。

自分を観察すると、こんな風に気づくかもしれません。
・怒っている
・拳をにぎっている
・肩に力が入っている
・呼吸が速くなっている
自分が怒っていることに気づけたなら、それだけで、前に進んだといえるでしょう。怒っている自分に対して、これから紹介する方法で対応してみましょう。
リラクゼーション
自分の怒りに気づいた人は、身体の変化にも気づいているはずです。
怒っているときは、身体も心の状態に同期し、戦闘モードになっています。身体が硬くなって、筋肉に力が入り、呼吸が速くなっています。
この身体の変化を逆手に取って、怒りを抑えていきます。つまり身体をリラックスさせること(リラクゼーション)で、身体から心に働きかけ、怒りをおさめていくのです。
リラックスにまずオススメな方法が深呼吸です。鼻らから少し息を吸って、口から長く吐いてみてください。できれば胸ではなく、お腹を使って深い呼吸をしていきましょう。

目安として、3秒で鼻から息を吸って、7秒で口からフーッと息を出していきましょう。呼吸は息を吐くことを中心にします。また息と一緒に怒りを身体の外に吐き出すことをイメージすると、より効果があります。
これに加えて、筋肉をリラックスさせていくと、さらに怒りを和らげることができます。
怒っている時は、筋肉に力が入っているため、筋肉の力を抜いてあげます。噛み締めた奥歯に気づいたら、口やあごの周りの筋肉を緩め、噛みしめるのをやめましょう。それから肩の力を抜いていきます。すると肩が広がり、肩の位置も下がってきます。また手を握りしめているなら、口から息を吐きつつ握りしめた手を力を開きます。何度もグーパーしてみるのも効果的ですよ(グーで力を入れて、パーで息を吐きながら力を抜いていきます)。

心理的にも、物理的にも距離を置く
先ほど書いたように、怒りに気づけたということは、その怒りと心理的に距離がとれたということです。この「距離をとる」ことは、非常に大事なことなのですが、できたら心理的に怒りを距離をとるだけでなく、物理的にもイライラする原因/環境から距離をとりましょう。
たとえば同じ部屋にいる恋人にカッときたら、その部屋からいったん出て、距離をおいてみるのです。
そして、家から出て少し散歩したりすると、ますます怒りから距離をとりやすくなります。こんな感じで、「心理的にも物理的にもまず距離を置く」ようにしてみてください。
“今の瞬間”に留まろう
ここで注意してほしいことがあります。イライラする対象から距離を取って、散歩にでかけられたとしても、散歩しながら「そもそもあんな言い方するなんて、本当にアイツは自分勝手だ!」など、イライラする対象のことを考えていると、効果は半減します。
ですので、ここでのポイントは“今の瞬間”に留まるようにするということです。最初は怒りに気づいて心理的に距離をとれていても、怒りのエネルギーは強いので、すぐに巻き込まれてしまいます。ですので何度でも「怒っている」ことに気づきなおし、今、生じている怒りを冷静に観察します。それから、今、起こっている他のことも観察します。
例えば、散歩中なら、こんな風に五感で感じたものを頭の中で実況中継すると効果的です。
「赤い花が咲いているな・・・風で葉っぱが揺れている・・・・マンホールに絵が描かれている・・・・あそこに人がいる・・・・黄色い服を着ている・・・それにしても、、アイツは本当にむかつく、あんなこといいやがって(今の瞬間から外れてしまったことに気づいて)・・あ、怒っている・・・怒り、怒り・・・・白い車・・・赤い車・・・日差しが暑い・・・汗ばんでいる」

今、この瞬間に上手に留まれると、過去に起きたことを考え続けるのが難しくなりますし、怒りそのものが力を失っていくでしょう。
この方法は、今にとどまっているだけなので、怒りを抑圧しているのとは違います。
紙に書いて、捨てるテクニック
怒りから「心理的に距離を置く」方法として、怒りを紙に書くテクニックもあります。
怒っていることを具体的に、状態を分析しながら紙に書きだします。そして、書いた後にそれを読んでから、紙をぐちゃぐちゃに丸めて、ごみ箱に捨てるのです。
この方法で怒りを鎮められるという研究結果が出ています。しかし、中には紙に書き出すのは面倒だと思う人もいるかもしれません。そういう方には、「聞いてよ、クマさん」というアプリを使うと、手軽に怒りを書き出して、捨てることができるのでオススメです。

書き出したものを捨てるとき、リスにあげたり、キツツキにつついてもらったりと、捨て方を選ぶことが出来ます。それから、クマは間違いなく、あなたの味方です。優しいクマの世界に触れると、怒りはだんだん落ち着いてくるはずですよ。
人に話して手放す
怒りについては、話すことで怒りが再燃してしまうこともありますので、話す人やタイミングに注意が必要です。
その一方で、上手に人を選んで気持ちを吐き出すと、スッキリして、気持ちが穏やかになることもあります。
とはいえ愚痴を言いたいときに、上手に聞いてくれる人が周りにいないこともありますね。そんな時は、専門のサービスを使うのもいいですよ。「ちょっと話をしたい時に使えるサービス」に情報を載せてありますので、興味のある方はご覧ください。
ココナラは電話占いだけでなく、電話で愚痴を聞いてもらったり、悩みを相談したりするときにも使えます。

子どもや10代の子の怒りに対応するには?
「うるせぇ!」「お前、ふざけんな!」
こんな暴言をすぐ言うような、カッとしがちなお子さんは、脳の前頭前野がうまく機能していないのかもしれません。ちなみに発達障害の一つ、ADHDの人は前頭前野の機能に問題があると指摘されています。
この前頭前野は、怒りを抑制する働きがあるのですが、20歳頃まで発達するとさせています。ですので、10代までの子がカッとしやすい場合は、まだ改善していく可能性があります。その点では、希望がありますね。
しかし自然な成長を待つだけではなく、カットしやすいお子さんは積極的にサポートしていくのが望ましいです。詳しくは「キレる子どもへの対応方法」に詳しく書いてありますので、キレやすいお子さん/自分に悩んでいらっしゃる方は読んでみてください。
なお、キレやすいお子さんの場合、養育環境の問題がないか今一度、確認してみて下さい。学校、友達、家庭で何かしんどい状況が続いていないでしょうか?また身体的な問題がないか、ちゃんとした食事・睡眠がとれているかなども、今一度、確認してみましょう。
