アサーションを学んで、上手に意見を伝えよう。コミュニケーションは練習すれば改善する

心のケア
臨床心理士
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上手にコミュニケーションをとれるようになりたい、自分の意見を軽んじられることなく相手に伝えたい、と願っている人は多いでしょう。
そういった方のために、自分の言いたいことを上手に伝える練習=アサーション・トレーニングをご紹介します

アサーション・トレーニングとは

アサーション・トレーニング(主張訓練)では、アサーティブ(主張的)にコミュニケーションできるよう目指していきます。

アサーティブとは

・相手の権利を尊重しながら、自分の考えや要求を上手に表現すること。アサーティブが上手でないと攻撃的になってしまったり、抑うつや不安が生じやすくなると言われている。

・英語ではassertive(アサーティブ)と書き、日本語では「主張的な」の意味となる。なおassertiveの名詞形がassertion(アサーション)であり、「主張」を意味する。

アサーティブな行動

・相手からの理不尽な要求を上手に断ることができる。
・自分の言いたいこと、要求を上手に伝えることができる。

なぜアサーション・トレーニングがおススメなのか? 

世の中には、弱い人には強く出る人、押しが強い人がいます。そういった人達から、攻撃的な方法に頼らず、自分や他者の権利を守るためには、アサーティブでいることが効果的です。

またアサーティブになると、さまざまなメリットが期待できます

・不安や抑うつが減少したという研究結果がある
・他者から発言を軽んじられることが減る
・より安定した人間関係を築きやすくなる

自己主張には3種類ある

臨床心理士
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自己主張は①アサーティブ(主張的)、②アグレッシブ(攻撃的)、③ノンアサーティブ(非主張的)の3種類に分けることが出来ます。

3種類の自己主張

①アサーティブ(主張的)
・自分の感情や意見を明確に伝えるが、相手への配慮も忘れない
・相手にこちらの要求を一方的に押し付けるのではなく、相手も意見を述べる余地がある
・自分の権利を大事にするが、相手の権利も傷つけたりはしない


②アグレッシブ(攻撃的)
・相手のことを考慮せずに、自分の感情や意見を相手に伝える
・相手に何をすべきか、どうすべきかなどこちらの要求を押し付ける
・アグレッシブな言い方をすると、相手もアグレッシブになるかノンアサーティブな反応をする
・結果的に相手が不快な感情になる
・長期的に良い人間関係を築きにくい


③ノンアサーティブ(非主張的)
・自分の感情や意見を押し込めて、相手を優先する
・自分を抑えているので欲求不満となり、不安や抑うつが生じやすい
・そのうち抑えている感情が爆発して激怒してしまう場合もある
・長期的に良い人間関係を築きにくい

アサーティブ(主張的)、アグレッシブ(攻撃的)、ノンアサーティブ(非主張的)において、それぞれの自己表現をとる背景には、自分や相手に対する信念が大きく影響しています。

例えば、アサーティブな態度をとれる人は、自分のことも相手のことも大事な存在と考えていますが、アグレッシブな態度をとる人は“自分は大事だけれど、相手は大事でない“と考えているのです。下の表に自分と相手に対する考え方について整理してありますので、ご覧ください。

 

 

 

 

アサーティブ アグレッシブ
(攻撃的)
ノンアサーティブ
(非主張的)
自分 OK OK not OK
相手 OK not  OK OK
臨床心理士
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不安が高い人は、ノンアサーティブな人が多いです。相手の意見は大事にできるけれども、自分の意見を大事にできていないのです。嫌われたらどうしようと考えて相手を尊重するというのは、決して対等な人間関係ではありません。そのうち相手から軽んじられるようになりやすいです。

アサーティブになるテクニック

臨床心理士
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まずは会話の姿勢の確認から入りましょう。自分には意見を言う権利があります。そして相手にも意見を言う権利があります。両方の権利を大事にできる人こそ、対等で、互いに気持ちの良い人間関係を築けるのです。

何をしてほしいかは明確に

相手と会話した結果、相手に何をしてほしいか(してほしくないか)を明確にしておきましょう。雑談では着地点を決めなくても問題ありません。しかし、交渉事では着地点が見えないと、話がまとまりにくなります。

ただし会話の最初には、どんな着地点を設定していいかわからないことも多いです。その場合は、考えられる選択肢を並べたり、アイディアを提案するなどしつつ情報収集し、最終的に自分が何をしてほいしか、してほしくないかを明確にしていきましょう。

Iメッセージを使う

「あなたは~だ」と決めつけると、アグレッシブな表現になりがちです。相手の欠点を指摘したり、人格を否定すると、トラブルになりやすいのは想像できますね。“あなた“ではなく「I=私」を主語にして話すようにしましょう。

例)「あなたは私の約束をいつも忘れてばかりじゃない」
→ Iメッセージを使うと・・・「私は、あなたに約束を忘れられたことで、寂しくなったし、悲しくなったの」

ボディ・ランゲージに気を付ける

言葉とボディ・ランゲージは一致していますか?

言葉だけしっかりしていても、目線を合わせようとしなかったり、身体が逃げてしまっていると、自信のなさが伝わってしまいます。またその反対に、身体に力がはいりすぎていたり、相手のパーソナル・スペースに侵入すると、相手は攻撃されていると感じやすくなります。

目線を自然な感じにあわせ、しっかりした姿勢を保ちましょう。声のトーンにも気をつけます。また関係性によって適切な距離は変わってきますが、距離的に問題ないかも確認しましょう。

ときには「No」と言うことも大事

日本人は「No」と言えない、断れない、と指摘されることがあります。

確かに欧米と比較すると、日本はNoと言いづらい文化だと思います。はっきりNoというと相手に失礼であり、自分勝手と思われてしまうのではないかと不安になる人も多いでしょう。

しかし時にはNoと言うことも大事です。Noと言わないと、ノンアサーティブ(非主張的)の人が陥る“相手から発言を軽んじられる”状態になりがちです。

工夫としては、Noという時に、できるだけ失礼がないように「今回は、大変申し訳ないけど」、「がんばっているのは伝わってきたけれども、総合的に考えると」、「そういう考え方もあるのはわかりましたが、費用面から考えて」など、言葉の潤滑油を使ってからNoと伝えるといいでしょう。

DESC法をおさえておく

バウアー夫妻とケリーによって編み出されたアサーションのテクニックにDESC法があります。DESC法は「問題解決のためのアサーション」とも言われています。

臨床心理士
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複雑な会話にDESC法だけで対応するのは限界がありますが、”基礎をおさえる”にはもってこいです。

DESC法では、D(描写)から始め、E(表現)→S(提案)→C(選択)と会話を進めていきます。下の表に説明を載せていますのでご覧ください。

DESC法を使おうとすると、まずはDとEの区別に混乱するかもしれません。その場合、下の引用を参考にしてください。

「あなたの作業が遅いから困っています」というセリフはDとEが交じっています。それを「あなたにお願いした作業の締め切りは昨日でした(D)。どうなっているのか心配です(E)。」とするとDとEが明確なのでわかりやすく、Sの提案も具体的になるでしょう。

出典:よくわかるアサーション 自分の気持ちの伝え方
臨床心理士
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実際の会話では、SとCが頻繁に繰り返さたりして、D→E→S→Cと順番通りにいかないことがほとんどですそのため役立たたないと思うかもしれませんが、DESC法のそれぞれの要素である、”状況を客観的に伝える”、”感情を伝える”、”提案する”などの要素を入れることが、アサーションのコツだと思って使ってみましょう。

文献

アサーション・トレーニングについては、日本では、平木典子先生の本がおすすめです。

まず最もオススメなのが、2007年に出版されたこちらの本です。出版から時間が経っているものの、最も基礎を抑えた本といえましょう。

次に2012年に出版された「よくわかるアサーション」ですが、上の本を持っているなら、特に目新しい内容はありません。しかしこちらの本はAmazon kindle unlimitedを使うと、無料で読むことができます(kindle unlimitedは無料で体験できますが、契約を続ける場合、年間あるいは月ごとに支払いが生じます)。また 例がたくさん載っていて、イラストも豊富なので持っていて損はないでしょう。

そして最後に、漫画でアサーションを理解したい方にはこちらの本をオススメします。思春期の子がアサーションを身につけることで、抑うつや不安が減ったという研究結果が報告されています。こちらの漫画は思春期のお子さんに、アサーションとは何かを学んでもらうための導入書として使えると思います。

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