反抗、非行、犯罪を犯す子/大人には診断がある?反抗挑発症、素行症、反社会的パーソナリティ障害の基礎知識。

心のケア

あまり知られていませんが、反抗的な子、非行少年、犯罪に手を染めてしまう人達には医学的な診断名がついていることがあります。その診断の代表的なものには「反抗挑発症」、「素行症」、「反社会的パーソナリティ」があります。「反抗挑発症」→「素行症」→「反社会的パーソナリティ障害」の流れに進んでいく(DBDマーチ)ことも多いため、まずは「反抗挑発症」の情報をチェックしていきましょう。

臨床心理士
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診断はレッテルを貼るためでなく、症状を予防したり、治療のために使っていすのが望ましいです

もしお子さんがADHDなど発達障害がある場合、特に注意深く情報をチェックすることをおすすめします。ただしADHDの子は反抗挑発症になりやすいとはいえ、みんなががそうなるわけではありません。予防に気をつけるのは大事ですが、偏見を持たないよう気を付けましょう(この子はできる/できない、と思うと実際、その予想通りになっていく有名な実験があります)。

反抗挑発症/反抗挑戦性障害とは

臨床心理士
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「反抗挑発症」は小学校に入る前に最初の症状が現れていることが多く、親(や教師など)に反抗し、それがかなりひどい場合に付けられる診断名です。

感情(怒り)や行動(挑発的、口論好き)のコントロールが難しく、それが問題となる状態が続いているとき診断されます。

素行症(後述)やADHDを併存していることが多いです。

・反抗挑発症は家庭の中だけで症状が見られることも多いです。

・養育者が変わる、親に厳しくしつけられる、親(夫婦)の不和、一貫性がない養育、ネグレクトがある場合などに、リスクが高まるので注意が必要です。

・研究によって異なりますが、1〜11%(平均3.3%)の人がこの診断に当てはまるとされています。

反抗挑発症の症状

・怒りっぽい
・(子どもなら)大人、権威のある人と口論する
・大人や権威のある人からの要求、ルールなどに従わない
・わざと人をいら立たせる
・自分の失敗や問題を他人のせいにする
・意地悪で執念深いことがある
などの症状がみられます

精神科医はDSMやICDといった診断基準を用い、診断を行っています。DSMー5の「反抗挑発症/反抗挑戦性障害」の診断基準をご紹介しましょう。

診断基準:DSM-5


A.怒りっぽく/易怒的な気分、口論好き/挑発的な行動、または執念深さなどの情緒・行動上の様式が少なくとも6ヵ月間は持続し、以下のカテゴリーのいずれか少なくとも4症状以上が、同胞以外の少なくとも1人以上の人物とのやりとりにおいて示されている。

怒りっぽく/易怒的な気分
(1)しばしばかんしゃくを起こす。
(2)しばしば神経過敏またはいらいらさせられやすい。
(3)しばしば怒り、腹を立てる。
口論好き/挑発的な行動
(4)しばしば権威ある人物や、または子どもや青年の場合では大人と、口論する。
(5)しばしば権威ある人の要求、または規則に従うことに積極的に反抗または拒否する。
(6)しばしば故意に人をいらだたせる。
(7)しばしば自分の失敗、また不作法を他人のせいにする。
執念深さ
(8)過去6ヵ月間に少なくとも2回、意地悪で執念深かったことがある。

注:正常範囲の行動を症状とみなされる行動と区別するためには、これらの行動の持続性と頻度が用いられるべきである。5歳未満の子どもについては、他に特に記載がない場合は、ほとんど毎日、少なくとも6ヵ月間にわたって起こっている必要がある(基準A8)。5歳以上の子どもでは、他に特に記載がない場合、その行動は1週間に1回、少なくとも6ヵ月間にわたって起こっていなければならない(基準A8)。このような頻度の基準は、症状を定義する最小限の頻度を示す指針となるが、一方、その他の要因、例えばその人の発達水準、性別、文化の基準に照らして、行動が、その頻度と強度で範囲を超えているかどうかについても考慮するべきである。

B.その行動上の障害は、その人の身近な環境(例:家族、同世代集団、仕事仲間)で本人や他者の苦痛と関連しているか、または社会的、学業的、職業的、または他の重要な領域における機能に否定的な影響を与えている。

C.その行動上の障害は、精神病性障害、物質使用障害、抑うつ障害、または双極性障害の経過中にのみ起こるものではない。同様に重篤気分調節症の基準は満たさない。

現在の重症度を特定せよ
軽度:症状は1つの状況に限局している(例:家庭、学校、仕事、友人関係)
中等度:いくつかの症状が少なくとも2つの状況で見られる。
重度:いくつかの症状が3つ以上の状況で見られる。

反抗挑発症への対応

「キレる子どもへの対応方法」を参考にしてください。

以下、簡単に反抗挑発症の対応ポイントをご紹介します。

反抗挑発症の子への対応ポイント

・できるだけ早く専門家、医療機関に相談する
(本人が必要に応じて薬物療法や認知行動療法、ソーシャルスキルトレーニングなどを受けられる環境を作る)

ペアレント・トレーニングを受ける(親が効果的な養育方法を学ぶ)

子どもがキレている最中ではなく、キレる前に話し合ってトラブルを予防する問題解決のスキルを本人が学べるようにする

・学校や各関係機関が連携できる体制を整える

反抗挑発症があったからといって、多くの子供が(不良行為・犯罪を犯す)素行症に進むわけではありません。しかし一部は素行症に進んでしまうので、素行症にならないよう十分なサポートが必要です。

素行症/素行障害とは

 ・「素行症」は反抗挑発症と比べて、より行動に焦点が当てられ、ものを壊したり盗む、ケンカする、他人をいじめるなど他人の権利を繰り返し侵害する場合などに診断されます。 

・研究によって違いはありますが、2〜10%程度の人が当てはまるされています。 

・素行症と診断されるケースの多くは、そうなる前に反抗挑発症だったとされています。

・小・中学生で発症することが多く、16歳以降の発症はまれです。

・脳の中で感情制御や感情処理に関わる部位(前頭ー側頭ー辺縁系の連絡など)に構造的/機能的障害があるとされます。

生物学的要因(感情調整の難しい子、平均以下の知能【特に低い言語性IQ】)
+ 環境要因(一貫性のない子育ての仕方、過酷なしつけ、虐待、親の精神病理など)
→ 素行症になりやすい

生物学的要因と違って、環境要因は努力で変えることができます。予防のために親は安定した環境づくりができるといいですね

素行症の症状

精神科医はDSMやICDといった診断基準を用い、診断を行っています。DSMー5の「素行症/素行障害」の診断基準をご紹介しましょう。

診断基準:DSM-5

A.他者の基本的人権または年齢相応の主要な社会的規範または規則を侵害することが反復し持続する行動様式で、以下の15の基準のうち、どの基準群からでも少なくとも3つが過去12ヵ月の間に存在し、基準の少なくとも1つは過去6ヵ月の間に存在したことによって明らかとなる:
人および動物に対する攻撃性
(1)他人をいじめ、脅迫し、または威嚇する。
(2)しばしば取っ組み合いの喧嘩を始める。
(3)他人に重大な身体的危害を与えるような凶器を使用したことがる(例:バット、煉瓦、割れた瓶、ナイフ、銃)。
(4)人に対して身体的に残酷であった。
(5)動物に対して身体的に残酷であった。
(6)被害者の面前で盗みをしたことがある(例:人に襲いかかる強盗、ひったくり、強奪、凶器を使っての強盗)。
(7)性行為を強いたことがある。
所有物の破損
(8)重大な損害を与えるために故意に放課したことがある。
(9)故意に他人の所有物を破損したことがある(放火以外で)。
虚偽性や窃盗
(10)他人の住居、建造物、または車に侵入したことがある。
(11)物または好意を得たり、または義務を逃れるためにしばしば嘘をつく(例:他人をだます)。
(12)被害者の面前ではなく、多少価値のある物品を盗んだことがある(例:万引き、ただし破壊や侵入のないもの、文書偽造)。
重大な規則違反
(13)親の禁止にもかかわらず、しばしば夜間に外出する行為が13歳未満から始まる。
(14)親または親代わりの人に家に住んでいる間に、一晩中、家を空けたことが少なくとも2回、または長期にわたって家に帰らないことが一回あった。
(15)しばしば学校を怠ける行為が13歳未満から始まる。

B.その行動の障害は、臨床的に意味のある社会的、学業的、または職業的機能の障害を引き起こしている。

C.その人が18歳以上の場合、反社会性パーソナリティの基準を満たさない。

素行症の対応

お子さんが素行症と診断された時、すでに保護者の方は大変悩まれていると思います。そして保護者の方だけでは、もはやお子さんの問題行為に対応が難しい状態で、警察、学校、医療機関、児童相談所といった関係機関ともやりとりされていらっしゃるのではないでしょうか。

従って、素行症の子の保護者は、各機関がスムーズに連携し方針や対応を決定できるよう、積極的に各機関に相談していくようにしましょう。

また、ここまでくると、保護者の方が精神的に参っていると思いますのでご自身のメンタルケアにも気をつけてください。保護者にある程度の精神的余裕がないと、冷静な判断や対応が難しくなってしまいますので、周囲にもサポートをお願いするようにしましょう。

児童自立支援施設や少年院に行く子は、ほとんどが素行症の診断基準を満たしています。両施設は非行を改善することを目的とした施設で、規則正しい生活をさせるなど、治療構造があります

児童自立支援施設

子が暴力をふるったり、窃盗や怠学を行うなどして、もはや親が子をコントロールできなくなっている場合、子の行動を改善するため、子を児童自立支援施設に入所させることになるかもしれません。

対象者:犯罪などの不良行為をした(するおそれがある)児童、家庭環境等から生活指導を要する児童
入所の流れ:保護者からの相談、学校・警察署から通告を受けた児童について、必要と認められた場合に都道府県知事(児童相談所長)が入所決定、家庭裁判所の審判にて送致
学業と生活:学校機能があるので、24時間、施設で過ごす。生活は規則正しく、一貫した指導が行われるようになっている。また成功体験が積みやすいようになっている。
特徴:一つの寮に児童数は多くて10名ほどの小舎制が主流。平均1~2年、寮で過ごす。少年院はほとんどが閉鎖処遇なのに対して、児童自立支援施設は私語が自由で開放処遇である。

素行症の子が、反社会的な性質を帯びたまま、反社会性パーソナリティ障害の大人に成長してくことがあります。そうならないよう、素行症の時点で十分に教育、ケア、サポートを行うことが本人・保護者・社会のために有益です。

反社会的パーソナリティ障害とは

世間でよく聞く“サイコパス”や“ソシオパス”は、反社会的パーソナリティ障害に含まれると考えられます。ちなみにサイコパスもソシオパスも正式な医学的名称として存在しません。

反社会的パーソナリティ障害は、少なくとも18歳以上でないと診断されません。基本的に子どもに診断される反抗挑発症や素行症とは違い、大人につける診断ということです。

・反社会性パーソナリティ障害の有病率は0.2~3.3%だとされています。

・パーソナリティ障害とつくだけに、長期的に反社会的な考え、行動が持続すると考えられます。しかし40歳までに症状が軽くなったり、診断基準を満たさなくなることもあります。

反社会性パーソナリティ障害の症状

診断基準:DSM-5

A.他人の権利を無視し侵害する広範な様式で、15歳以上で起こっており、以下のうち3つ(またはそれ以上)によって示される。
(1)法にかなった行動という点で社会的規範に適合しないこと。これは逮捕の原因になる行為を繰り返し行うことで示される。
(2)虚偽性、これは繰り返し嘘をつくこと、偽名を使うこと、または自分の利益や快楽のために人をだますことによって示される。
(3)衝動性、または将来の計画を立てられないこと。
(4)いらだたしさおよび攻撃性、これは仕事を安定して続けられない、または経済的な義務を果たさない、ということを繰り返すことによって示される。
(5)自分または他人の安全を考えない無謀さ。
(6)一貫して無責任であること。これは仕事を安定して続けられない、または経済的な義務を果たさない、ということを繰り返すことによって示される。
(7)良心の呵責の欠如、これは他人を傷つけたり、いじめたり、または他人のものを盗んだりしたことに無関心であったり、これを正当化したりすることによって示される。

B.その人は少なくとも18歳以上である。
C.15歳以前に発症した素行症の証拠がある。
D.反社会的な行為が起こるのは、統合失調症や双極性障害の経過中のみではない。

文献

「サイコパス・インサイド―ある神経科学者の脳の謎への旅」

ノンフィクションです。著書のジェームズ・ファロンはサイコパスの研究を行なっており、脳スキャンのデータで、殺人を犯したサイコパスの脳の特徴を理解しようとしていました。しかしある時、自分の脳のスキャンを行ったところ、はっきりとサイコパスの特徴が見られて衝撃を受けます。そういえば自分の祖先は犯罪者ばかり・・・。自分は賢く、恵まれた環境にいたので犯罪者になっていないだけで、本当はサイコパスなのか・・・?

ちなみに著者は自分を軽い躁状態が持続する双極性障害ではないかと考えているようですが、発達障害や素行症があったとは考えていないようです。

その他
 

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