キレる子どもへの対応方法。カッとなりやすい、反抗的なお子さんに効果的に介入するには?

心のケア

キレやすいお子さんへの効果的な介入方法

すぐにキレる、感情が爆発する、カッとなって手が出る、反抗的な態度をとる・・・

お子さんにそういう傾向があれば、ご家族は大変悩まれると思います。

キレやすいお子さんには何らかの診断がついていることも、ついていないこともあると思いますが、ご家族の悩みに変わりはありません。

今回、ご紹介する方法は、診断の有無に関わらず、診断の種類によらず、キレやすいお子さんに活用できる方法です。なおキレる子どもに診断がつく場合、双極性障害、間欠爆発症、反抗挑発症など様々なものがあります。

キレる子に使える、おすすめの一冊

海外では非常に評価が高くて、内容もとても素晴らしいのに、まだ日本語訳が出ていないRoss W. Greene(グリーン)博士の本があります。キレる子の対応には最適な本の一冊です。

THE EXPLOSIVE CHILD :A New Approach for Understanding and Parenting Easily Frustrated, Chronically Inflexible Children という本です。(簡約「キレる子ども:イライラしやすく、融通のきかない子供達を理解し、養育するための新しい方法」)

<この本のコンセプト>

◎ 子どもはうまく“やれる力がある“なら、とっくにそうしているはず(うまくやれないのは、子どもの能力の問題) ← 新しい考え
× 子どもはうまく“やりたい“気持ちがあるなら、そうするはず(うまくやらないのは、子どもの意思の問題) ← 今までの考え

解説:どの子供も、うまくやりたいと思っているが、スキルに発達的な遅れがあるため、手持ちのスキルで対応できない状態になり、キレたり反抗的態度をとってしまう

グリーン博士の指摘

・キレる子どもに診断をつけてもらっても、その子がつまずいているところを理解したり、効果的に子どもを助ける方法はわからない

・キレる子は、柔軟性、適応力、フラストレーションに耐える力、問題解決力といった、当たり前と思われているスキルに欠けている。 → それらが求められる時にキレてしまう(たとえば宿題を求められる時など)

・そういった子どもはスキルが不足しているせいで、泣き叫んだり、暴れたり、自分を傷つけたり、ののしってくるのであって、その行為自体を楽しんでいるわけではない。また怒りをぶつけるのは要求を通すのに効果的だからとか、相手の注意を引くにはいい方法だ、などと前もって計画して行っているわけではない。

博士は「報酬や罰」で子どもの行動を修正しようとする従来の方法では、不足しているスキルや問題解決方法は身につかないと指摘しています。

臨床心理士
臨床心理士

とはいえ、ベーシックな行動理論(行動療法)として「報酬や罰」の効果を知っておく方が望ましいでしょう。

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それでは、さっそく博士のやり方に従って、対応方法などをご紹介しましょう。

キレる子への対応方法

子どもが問題解決のためのスキルを身につけられるよう、子どもと保護者が協働作業を行います。

まず子どもを「問題を引き起こす敵」という観点から、「問題を解決するためのパートナー」と捉え直しましょう。

キレたり反抗する子への対応方法を要約するとこのような流れとなります。

<準備1>
なぜ子どもがキレたり反抗するのか保護者が理解する(不足しているスキルを特定する)

<準備2>
いつ
子どもとトラブルが生じるのか、保護者が具体的な状況を特定する

<最終準備>
3つのプラン(※後述)を理解し、問題解決を行いたい状況に優先順位をつける。そして優先順位の高い状況を、今回の話し合いで扱う問題として選択する。

<本番>
子どもと保護者が協働して話し合う

では、それぞれのステップをもう少し細かく見ていきましょう。

準備1:なぜ子どもがキレるのか理解する

キレて反抗する子は、みんなが自動的にできている問題解決のプロセスでつまずいていると考えられます。

問題解決のプロセス

①問題を特定する
②過去の経験などに基づいて、どんな対応方法があるか候補を出す
③最も良い解決方法を選択するために、それぞれの対応方法を取ったら何が起きるのかを吟味する

キレる子どもの多くは衝動的なので、②の段階で複数の方法を思いつくかもしれませんが、その時点で最初に思いついたことを行動しています。また大体、最初に思いついたことは最悪の方法です。

キレやすい子どもは様々なスキルが不足していると思われます。たとえば言語で処理するスキルや、集中するスキル、時間感覚のスキル、感情に巻き込まれず考えるスキル、注意を切り替えるスキルなど。あなたの心配している子にどんなスキルが不足しているのかを特定しましょう。
(グリーン博士がスキルをまとめたサイト:  www.livesinthebalance.org  ※英語です)

準備2:いつトラブルが起きるか状況を特定する

不足したスキルを特定した後、次は状況も特定していきます。子どものスキルが不足しているために、周りの人が困るような状況がありますよね?その状況を具体的に特定しましょう。子どもがキレたり、反抗したり、暴れるのはどんな状況かを思い出すと、見つけやすいです。

トラブルが生じる状況を特定しよう

例)
・レジで大人しく一緒に行列を待ってほしいとき
・漢字テストのための宿題をするとき(単に「宿題をするとき」ではなく、何の内容で宿題をするのか具体的に取り上げます)
・平日の朝、学校の制服に着替えるとき
・家に帰る門限を守って欲しいとき

最終準備

まず3つのプランを理解しましょう。

3つのプラン

プランA:大人が一方的に子どもに指示して問題を解決する(よくありがちな方法)
プランB:子どもと大人が協働して双方向で問題を解決する。
プランC:その問題を今は扱わずに置いておく

よく行われている対応方法はプランAです。でもキレる子どもは、大人が一方的にこれをしなさいと指示すると、反射的に嫌だと言うので、ケンカになってしまうことも多いと思います。

プランAで効果が出てないと思われる方は、ぜひプランBやプランCを検討してください。

きっと沢山、解決したい問題があると思います。しかしその中で、最も優先順位が高い問題を一つ選んでプランBで扱います

そして残りをプランCに一時的に置いておきますそして優先順位が高い問題が解決した後に、プランCにあった候補をプランBに移していきます。

さあ、これで準備はできました。では、いよいよ本番です。

本番

本番はプランBのことであり、実際に子どもと問題解決に向けて話し合うことです。

臨床心理士
臨床心理士

キレている最中にプランBを行うのは難易度が相当に高くなってしまうので、できるだけ問題の起きる前に行うようにします。(緊急事態への対処ではなく、予防として使用するのがおススメです

では、プランBをやっていきますよ!プランBには3つの段階があります。今回、扱いたい優先順位の高い問題(例えば、学校に行きたがらないこと)は頭に入っていますね?

では、次の順でお子さんと話し合っていきましょう。

プランBの進め方

  1. 共感する段階:ここで子どもが問題をどう捉えているかなどを情報収集する
  2. 問題が何かを話し合う段階:問題の状況をわかりやすく整理し、その問題について保護者が心配していることを伝える
  3. その問題の解決方法を一緒に話し合う段階:その問題について、保護者と子どもが協働して、現実的かつ双方が納得する解決方法を導き出す

では1〜3の段階を、もう少し細かく見ていきましょう。

1.共感する段階

・ここでしっかり子どもがどう問題を捉えているのか、子どもの不安や見通しなどを情報収集しておきます。意外な発見があるかもしれません。

・「〜〜〜〜に気づいたんだけど、どう?」と話題を持ちかけましょう。〜〜〜〜の部分は問題状況が入ります。

話題を持ちかけるセリフの例


・最近、学校に行きたがないことに気づいたのだけれど、どう?
・最近、国語の宿題ができてないことに気づいたんだけど、どう?
・最近、寝る時間が守れないことに気づいたんだけど、どう?

・この段階では、親は自分の思っている解決方法を言わないように注意してください。あくまで情報収集が目的なのを忘れないで下さい。

・子どもがどう「感じているか」ではなく、どう「考えているか」情報収集します。

・話題を振った時、子どもが「別に」とか「そんなことない」、「わからない」などと言ってきても想定内なので、そう言われた後に、どう話を深めていくか練習しておきましょう。

話の深め方

・親が話題を振った時、子どもが話に乗って来ない場合、親は「それってどういう意味?」、「もうちょっと教えて」、「今までそれについて話してきてなかったものね。待つから、ちょっと考えてみて」などと話を聞いていきます。子どもが話に乗ってこないということは、子どもは問題について心配してなかったり、深く考えてないのでしょう。親は忍耐強く、子どもに考えるよう促しましょう

・子どものいうことを、”そのまま返す”テクニックは使いやすいです(子:「嫌だ」→ 親:「嫌だったんだね」)。親が振った話題について、子どもが問題を否定してきた場合も、”そのまま返す”ことができます。(子:「別にそれは問題じゃない」 → 親「ん?学校に行きたがらないのは問題じゃないの?もう少し、どういうことか教えてくれる?」)

・子どもが「それについて話したくない」と言う時でも、“なぜ”話したくないかを説明してくれることが多いです。話し合うことを拒否されたら、“なぜ”なのか理由を情報収取し、対応に役立てます。今は話せなくても、条件が整った日に、話してくれるかもしれません。

・「いつ」「誰が」「どこで」「何を」「どのように」という言葉を使って質問しましょう。

2.問題が何かを話し合う段階

・親の方から「私が心配なのは〜〜〜〜」と自分が心配している問題について伝えます。

・親自身が、何を心配しているのかわからなくなった場合、①問題の状況が子どもにどんな影響を与えているか、②問題の状況は、周りの人にどんな影響を与えているか、を考えてみましょう。

親の心配を伝えるセリフの例

・私が心配なのは、学校に行かないと、たくさんの大事なことが学べないということなの。
・私が心配なのは、国語の宿題をしないと、成績が下がるし、国語の力もつかないことなの。
・私が心配なのは、就寝時間に寝ないと、次の日に登校が辛く感じたり、授業に集中できなくなるってことなの。

3.その問題の解決方法を一緒に話し合う段階

・親は「その問題にどう対応したらいいか一緒に考えていこう」などと言って、子どもと協力して問題解決の方法を探っていきます。

・親子で一緒に、ブレーンストーミング(質はともかく、沢山アイディアを出す)をして、あり得そうな解決方法をどんどん話し合っていきます。

・1と2の段階で話し合った内容を思い出して、整理して子に確認するといいでしょう(例えば「〜〜〜〜(1と2の段階で話し合ったこと)ってことで困っているんだよね」)。その後に子どもに「どうしたらいいと思う?」と子ども考えを聞いていきましょう

まずは子どもが考える問題解決の方法を聞くようにします。大人の方が解決方法がわかっていたとしても、子どもに問題解決の練習をしてもらうことが重要です。大人が一方的に問題解決の方法を言い渡さないようにしましょう(一方的に言い渡すのはプランAですね!)。

・最終的に、子どもか大人のどちらかが満足する方法ではなくて、双方が納得する解決方法が出るまで話し合います。①現実的な解決方法で、かつ②双方が納得する解決方法、であることを確認してください。

最後に

キレる子への対応方法について、大体の流れはわかっていただけたのではないでしょうか?難しく感じると思いますが、話し合いを通して親子の絆も深まりまので、ぜひやってみましょう。最初は手こずっても、だんだんうまくなるはずです。

保護者だけで、子どもを教育しようと考えるとしんどくなりますね。子供の力を伸ばすにしても、習い事やサービスを活用したり、各機関と連携をとるなどして、周囲の力を借りるといいですよ。

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