ADHDの子どもへの関わり方のコツ。親や教員が知っておきたいペアレント・トレーニングの基礎知識

心のケア
臨床心理士
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環境に気をつけないと、ADHDの子は非行・犯罪の道に入りやすいとされています。予防のためにも関わり方を工夫し、本来の素敵な才能をのばしてあげましょう

ADHDのお子さんの非行化を防ぐという視点は、本人のためにも、そしてご家族や社会のためにも大事なことです。

ADHDの子はエネルギーが高いことが多く、良くも悪くも周りに大きな影響を与えがちです。ADHDの子が適切な環境で育つと、周りにインスピレーションを与えるような人気者や尊敬される人になるかもしれません。

一方、望ましくない環境で育つと、非行化して周りの人が苦しんだり、あるいは本人がうつや不安障害などの心の病気で苦しむようになるかもしれません。

ADHDのお子さんが、生き生きと本来の良さを伸ばしていけるよう、今回、お子さんに上手に関わる方法、コツをご紹介していきたいと思います。お子さんに最も身近な存在である親(ペアレント)によるお子さんのサポート方法ですが、保育・教育機関の先生にも役立つ基礎知識です。

その関わり方は損か得か?

ADHDのお子さんの子育ては大変です。でも今、手をかけないと、後でもっと大変になるでしょう

”損か得か”という言葉は子育てに適切な言葉ではないかもしれません。しかしADHDの子の育て方には、”知らないと損をする”こと、”今やっておかないと後が大変”なことは存在します。

では、ADHDの育て方にどんな得や損があるのか、次からもっと細かく見ていきましょう。

損する関わり方

まずADHDの親御さんが将来、自分の首を絞めることになりかねない育て方をチェックしましょう。
問題を起こしがちな子どもに対して、親御さんがどう対処していいかわからず、つい、やってしまいがちな行動ですが、できるだけ避けるようにしてください。

長い目で見て損な方法

①ADHDの子をむやみやたらに怒ったり、体罰を使ってしつける

②妻など配偶者の育て方が悪いとなじる
→ そのうち家庭が壊れます

こういった関わり方は、将来的に子どもが非行化して親の手に負えなくなったり、子どもがが心を病んでしまうリスクが高まるため、「損」な関わり方です。

臨床心理士
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ADHD生物学的要因) + 子への厳しい罰、夫婦の不仲など(環境要因) → 不良や犯罪の道に進む/心を病む可能性UP

厳しい罰 = 長い目で見ると損

親が厳しい叱責や体罰に頼って育てると、ADHDの子は恐怖のために、”短期間は”親のいうことを聞くようになるかもしれません。また叱責する親御さん側は、一時的にストレス発散できるかもしれません。これは短期的なメリットです。

しかし、同時に損もしているでしょう。

というのも・・・
①子供はイラついたら、他人に怒って、暴力を振るえばいいと学習します
②子供が目上の人に恐怖や敵意を持つようになります
③怒られてばかりの自分はダメな子だと感じます

こういったことが、「長い目で見ると大損」になっていくのです。

大損

→ 将来、非行に走ったり、犯罪に走る可能性が高まります反抗挑発症、素行症、反社会性パーソナリティといった2次障害を持つリスクが増えます)
→ 本人のトラウマになって、将来、うつや不安障害などの2次障害を持つリスクが増えます。そうなると親がケアしないといけなくなるかもしれません。

そもそも頻繁に罰を与えたところで、ADHDの子は、しばらくたつと同じ失敗や間違いを繰り返しやすく、思うほどの効果が得にくいです。そのため頻繁に罰を繰り返したり、どんどん罰を厳しくしないといけなくなって、親子が敵対するような関係になりがちです。

配偶者を責めるリスク

子どもが問題行動を繰り返す時、周りは子育てに関わっている人(多くは、母親)が悪いと判断しがちです。

しかし、ADHDの子を育てる母親はとても大変なのです。問題行動を起こす子の母親は疲労し、精神的に参っていることが多いです。そこに夫が「お前の育て方が悪い」と責める態度をとってしまうと、夫婦関係は悪化するでしょうし、家庭崩壊にもつながってしまいます。

そして、このような厳しい家庭環境は、当然ながらADHDの子にも悪影響を及ぼします。

ここで、もう一度、確認しましょう。
ADHD(生物学的要因) + 子への厳しい罰、夫婦の不仲など(環境要因) → 非行や犯罪の道に進む/心を病む可能性UP

ADHDのお子さんのためにも、そして親御さん自身のためにも、夫婦で責めあうことは避けましょう。それよりも夫婦が協力している姿を見せて、協力関係の築き方をお子さんに学んでもらった方が、長期的にみるとお得です。

ADHDの養育ポイント: 配偶者の子育て方法を責めるよりも、家族で協力関係を築くべし!

ただし、これは簡単なことではないかもしれません。ADHDの子の親御さん自身も発達障害(の傾向)をお持ちのことがあります。そのため配偶者自身が怒りっぽかったり、考え方に偏りが強いこともあるのです。夫婦仲が悪くて修復が難しい場合、せめて子供の前でケンカする姿を見せないといった配慮をしましょう。

では、いよいよペアレント・トレーニングについて説明します。

二つのペアレント・トレーニング

これから二つのペアレント・トレーニングを紹介します。どちらの方法も使えるようになるとベストです。

二つのペアレント・トレーニング

方法①:行動に焦点を当てる方法
方法②:話し合う方法

二つの方法は、互いの足りない部分を補ってくれるでしょう。

ペアレント・トレーニング①:行動に焦点を当てる方法

まず「行動に焦点を当てる方法」をご紹介します。こちらがスタンダードな方法であり、医療機関などでペアレント・トレーニングを受けるときは、こちらの方法を中心に教えてくれるかもしれません。

<やり方>
1.子どもの「行動」に焦点を当てます。

2.子供の「行動」を、①好ましい行動(増やしたい行動)、②好ましくない行動(減らしたい行動)、③危険な行動(特に減らしたい行動)、の3つに分けます。

行動を分けるときのポイント

ADHDのわが子が「“好ましい行動“をすることなんてない」と述べる親御さんもいます。そういう場合は要求水準を下げて、当たり前のことに見えても、続けてほしいことは“好ましい行動“として評価しましょう。“好ましくない行動”を止めるのも、“好ましい行動”です。

好ましい行動の例
今日は消しゴムをなくさなかった
忘れずに連絡帳に記入をしてきた
友達と仲良く遊べた


3.それぞれの行動に対して、異なる結果が与えられるようにします。

(子どもの行動)  → (周囲の大人から与えられる結果)
①好ましい行動   → 報酬    
②好ましくない行動 → 無視
③危険な行動    → 警告・罰

下の表にこの関係を整理してあります。

 

  ①好ましい行動 ②好ましくない行動 ③危険な行動
・歯を磨く
・宿題をする
・約束の時間を守る
・騒ぐ
・なかなか宿題をしない
・文句を言う
・誰かを叩く
・物を壊す
方法①

(周囲は)
報酬を与える

(周囲は)
無視する

(周囲は)
警告・罰を与える

<例>
・できたことを褒める
・「ありがとう」と感謝
・○○をができたら(例:宿題)、〜〜(例:マンガ、ゲーム)を認める

<例>
・しばらく待って、好ましい行動が出たら、すぐ褒める

<例>
・警告する
・叱る
・タイムアウト
・報酬をとりあげる

方法②   優先順位をつけて
順番に扱う

大事なのは、できるだけ「褒める」ことです。叱るなどの罰は、ここぞというときに使います。

褒めるときのポイント

・子供がほんの少しでも好ましい行動(例:宿題)ができたら、すぐに褒めます。また、やっている最中にも褒め、やり終わったら褒めます。
・嫌味や皮肉にならないようにしてください。
・ADHDの子どもは“意思に問題がある”のではなく、“能力に問題がある“ことも多いので、課題をやる前に「あなたは、やればできる子。信じてる」といってプレッシャーをかけるのはやめましょう。一方、課題ができた時には、その言葉は褒め言葉になりえます。
・イタリア人みたいな褒め方(些細なことでも「すごい」、「さすが」と愛情たっぷり褒めたたえる)をイメージするといいでしょう。

無視するときのポイント

・「好ましくない行動」は無視します。子どもを無視するのではなくて、「好ましくない行動」を無視することに注意してください。
・「好ましくない行動」をしたときに周囲が注目してしまうと、注目が報酬になってしまい、同じ行動が増える可能性が高まります。「好ましくない行動」=「減らしたい行動」ですので、無視をして注目を与えないようにします。

しかし、現実的には、「行動に焦点を当てる方法」で、うまくいかないケースもあります。

うまくいかないケース

ADHDの子どもが「好ましくない行動」をしたので、親がその行動を無視したところ、子どもは「話をきけ」と怒り、手あたり次第、物を破壊していきました。

するとどうしても親は子を注意したり、罰を与えることになります。しかしこのようなお子さんだと、罰を与えると報復したり、罰にめげずに更なる問題行動を起こしたりします。→ 親はもっと厳しい罰 → 子はさらに問題行動 → 親はもっと厳しい罰・・・という風に、互いに行動がエスカレートしてきました。

この子は成長するにつれ、目上の人に敵意を向けるようになっていきました。周りの人に暴力をふるったり、犯罪を犯すようになり、ようやく親は厳しい罰ではコントロールしきれないことを悟ったのです。

ここまでくると、もう子どもは親の手に負えなくなっています。反社会的行動に対して、今度は親の代わりに警察や司法がこの子に罰(矯正)を与える構造が出来上がりました。親は無視や罰以外に、もっといい方法を幼少期に教えられたら良かったのに・・・と後悔しています。

このように行動に焦点を当てるだけではうまくいかないケースもあります。そこで、もう一つのペアレント・トレーニングとして、”話し合って協力する方法”も練習していきましょう。この方法は、大人も子供も人間的に成長していけますし、絆が深くなると思います。

ペアレント・トレーニング②:話し合う方法

目的

問題を一つずつ解決することを目指します。「行動に焦点を当てる方法」のうち、「好ましくない行動」と「危険な行動」を問題として扱いますが、「危険な行動」はその最中ではなく、”事前に”話し合うようにすると成功しやすいです。

・「話し合う方法」を通して、問題解決のためのスキルを子どもが身につけられるようにします。

⭐︎この方法は「キレる子どもへの対応方法」で詳しく紹介しています⭐︎
(“キレる”問題がないお子さんにも使えます)

心構えと全体の流れ

心構え:子どもを「問題を解決するためのパートナー」と捉え、子どもと保護者が協働作業を行えるようにします。

全体の流れ

<準備>
いつ」、そして「なぜ」子どもに問題が生じるのか保護者が状況を特定するようにします。
問題は沢山あるかもしれませんが、優先順位の高い問題を一つだけ選択します。

<本番>
選んだ問題について、子どもと保護者が解決するにはどうしたらいいのか話し合います。

では、それぞれのステップを細かく見ていきましょう。

準備
臨床心理士
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いつ」、そして「なぜ」子どもに問題が生じているのか保護者がまず状況を特定しておきましょう。「なぜ」には子どもの不足しているスキルを当てます(「甘えているから」「子どもの意思」ではなく、能力の不足焦点を当てます

問題の状況の特定

例1
いつ:夜、眠る時間になってもテレビを見続けようとする。
なぜ:注意を切り替えるスキルが不足している(頭はまだテレビを見ようとする状態で、他の行動に移ることが難しい)

例2
いつ:漢字テストのための宿題をいつもやろうとしない単に「宿題をするとき」ではなく、何の内容で宿題をするのか具体的に取り上げます
なぜ:①注意を切り替えるスキルが不足している(頭はまだ外でサッカーをしている状態のままで、宿題に注意が切り替えられない)。
②集中力が続かない
③漢字を読むのに時間がかかる

子どもに直してもらいたいことは沢山あるかもしれませんが、優先順位の高い問題を1つだけ選択してください。その問題が解決したら、次は2番目に優先順位が高いものを、その次は3番目を・・・と順番に扱っていきます。

さあ、これで準備はできました。では、いよいよ本番です。

本番

本番では、実際に子どもと問題解決に向けて話し合いをします。

臨床心理士
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3つの段階があるので、この順でお子さんと話し合っていきましょう。

話の進め方

  1. 共感する段階:ここで子どもが問題をどう捉えているかといった情報を収集します
  2. 問題が何かを話し合う段階:問題の状況をわかりやすく整理し、その問題について保護者が心配していることを伝えます
  3. その問題の解決方法を一緒に話し合う段階:その問題について、保護者と子どもが協働して、現実的かつ双方が納得する解決方法を導き出します

では1〜3の段階を、もう少し細かく見ていきましょう。

1.共感する段階

・ここでしっかり子どもがどう問題を捉えているのか、子どもの不安や見通しなどを情報収集しておきます。意外な発見があるかもしれません。

「〜〜〜〜に気づいたんだけど、どう?」と話題を持ちかけましょう。〜〜〜〜の部分は問題状況が入ります。

話題を持ちかけるセリフの例


・最近、学校に行きたがないことに気づいたのだけれど、どう?
・最近、国語の宿題ができてないことに気づいたんだけど、どう?
・最近、寝る時間が守れないことに気づいたんだけど、どう?

・この段階では、親は自分の思っている解決方法を言わないように注意してください。あくまで情報収集が目的なのを忘れないで下さい。

・子どもがどう「感じているか」ではなく、どう「考えているか」情報収集します。

・話題を振った時、子どもが「別に」とか「そんなことない」、「わからない」などと言ってきても想定内なので、そう言われた後に、どう話を深めていくか練習しておきましょう。

話の深め方

・親が話題を振っても子どもが話に乗って来ない場合、親は「それってどういう意味?」、「もうちょっと教えて」、「今までそれについて話してきてなかったものね。待つから、ちょっと考えてみて」などと話を聞いていきます。子どもが話に乗ってこないということは、子どもは問題について心配してなかったり、深く考えてないのでしょう。親は忍耐強く、子どもに考えるよう促しましょう

・子どものいうことを、”そのまま返す”テクニックは使いやすいです(子:「嫌だ」→ 親:「嫌だったんだね」)。親が振った話題について、子どもが問題を否定してきた場合も、”そのまま返す”ことができます。(子:「別にそれは問題じゃない」 → 親「ん?学校に行きたがらないのは問題じゃないの?もう少し、どういうことか教えてくれる?」)

・子どもが「それについて話したくない」と言う時でも、“なぜ”話したくないかを説明してくれることが多いです。話し合うことを拒否されたら、“なぜ”なのか理由を情報収取し、対応に役立てます。今は話せなくても、条件が整った日に、話してくれるかもしれません。

・「いつ」「誰が」「どこで」「何を」「どのように」という言葉を使って質問しましょう。

2.問題が何かを話し合う段階

・親の方から「私が心配なのは〜〜〜〜」と自分が心配している問題について伝えます。

・親自身が、何を心配しているのかわからなくなった場合、①問題の状況が子どもにどんな影響を与えているか、②問題の状況は、周りの人にどんな影響を与えているか、を考えてみましょう。

親の心配を伝えるセリフの例

・私が心配なのは、学校に行かないと、たくさんの大事なことが学べないということなの。
・私が心配なのは、国語の宿題をしないと、成績が下がるし、国語の力もつかないことなの。
・私が心配なのは、就寝時間に寝ないと、次の日に登校が辛く感じたり、授業に集中できなくなるってことなの。

3.その問題の解決方法を一緒に話し合う段階

・親は「その問題にどう対応したらいいか一緒に考えていこう」などと言って、子どもと協力して問題解決の方法を探っていきます。

・親子で一緒に、ブレーンストーミング(質はともかく、沢山アイディアを出す)をして、あり得そうな解決方法をどんどん話し合っていきます。

・1と2の段階で話し合った内容を思い出して、整理して子に確認するといいでしょう(例えば「〜〜〜〜(1と2の段階で話し合ったこと)ってことで困っているんだよね」)。その後に子どもに「どうしたらいいと思う?」と子ども考えを聞いていきましょう

まずは子どもが考える問題解決の方法を聞くようにします。大人の方が解決方法がわかっていたとしても、子どもに問題解決の練習をしてもらうことが重要です。大人が一方的に問題解決の方法を言い渡さないようにしましょう。

・最終的に、子どもか大人のどちらかが満足する方法ではなくて、双方が納得する解決方法が出るまで話し合います。①現実的で、かつ②双方が納得する解決方法、であることを確認してください。

最後に

保護者だけで、子どもを教育しようと考えるとしんどくなりますね。子供の力を伸ばすにしても、習い事やサービスを活用したり、各機関と連携をとるなどして、周囲の力を借りるといいですよ。

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それからADHDの子育てには、保護者の方も相当のパワーがいります。心に余裕をもって子育てできるよう、大人も自分のケアをしっかりできるといいですね。

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